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日本のキャッシュレスは進んだのか?

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2019年10月の消費増税とともに、キャッシュレス決済をした際の5%還元施策もスタートしましたが、予定通り2020年の6月に終了しました。本施策により、キャッシュレスは進んだのでしょうか。

日本のキャッシュレス事情おさらい

一般的に日本のキャッシュレスは遅れているというのが通説です。こうした意見に対抗すべく、金融庁が振込や公共料金の口座振替までぶっこんだ彼らが言うところの真のキャッシュレス決済比率という謎の指標を作り、それによると日本のキャッシュレス比率は約5割ということになっています。

出典:金融庁HP(以下リンク)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/seido-sg/siryou/20181109/cashless.pdf

一方、世間一般で言われるキャッシュレスとは店頭でのクレジット・プリペイド、モバイル決済等を指すものと言えます。これは経済産業省の言うところのキャッシュレスで、その比率は約27%程度でした。

ポイント還元施策の効果は?

調査会社のインテージによると6月の決済手段ではQR決済が大幅増、電子マネーが4割増、クレカが1割増のようでした。

また還元事業への参加社数は115万店で、内3割の事業者が初めてキャッシュレス決済を導入したようです。

ポイント還元により、一定程度キャッシュレス推進には寄与したと言えるのではないでしょうか。一方、これだけの還元施策を導入したとしても未だ現金決済が最大シェアを占めており、バラマキでは限界があることが露呈し、日本の決済システムを根本的に変えない限り、真のキャッシュレスは進まないのではないでしょうか。

海外のキャッシュレス事情はどうか

韓国の状況

韓国は世界で最もキャッシュレス決済が浸透している国で、その比率は90%を超えています。政府がクレジットカード決済額の20%を所得控除する制度や、年商240万円以上の店舗でのクレジットカード取扱義務化等の施策によるところが大きいです。

中国の状況

年初まで駐在していた中国では「Alipay」と「WeChat Pay」の2大モバイル決済が大宗を占めています。着任間もない頃は現金を使用していましたが、基本的に現金を持ち歩いたことはありません。個人間送金も無料でできる為、飲み会の精算とかもかなり楽でしたね。日本のQR決済との大きな違いは、紐付け口座からチャージ不要でダイレクトに決済できるところです。このチャージという一手間がめんどくさいんですね。クレカ紐付けもそれぞれ自社カード優先ですし。一方、クレジットカードを使えるお店は大きな店舗やレストラン以外にありません。タクシーもNGです。クレカはまさに信用がある人しか持てない為、持っている中国人が少なく、使えるお店も少ないというわけです。あとはスキミングリスクが高いので、敢えて使いたくはないですね。。。

アメリカの状況

プラスチックカード発祥の地であるアメリカのキャッシュレス比率は45%程度です。旅行していてもクレジットカードが使えないお店は無いのではないでしょうか。アメリカでクレジットカードが普及しているのは日本に比べて圧倒的に加盟店手数料が安いことが挙げられます。日本人はクレジットカード決済を使う人も基本的には一括払いだと思います。収入に見合った支出に抑える、という観点では当然の対応だと思います。一方、カード会社から見た場合、分割払いやリボ払いを使ってもらえれば利息収入が入ります。使わなければどれだけ決済してもらっても加盟店手数料のみです。アメリカでは分割払いやリボ払い比率が高く、そちらでマネタイズできている為、加盟店手数料を抑えられています。

新たな決済ネットワークを構築

日本の決済システムは最終的には全銀システムに結びついており、堅牢である一方、維持コストが高止まりしています。政府の圧力で銀行間手数料を無理矢理下げさせようとしていますが、真のコスト削減のためには、ブロックチェーンを用いた新たな決済ネットワークの構築が必要でしょう。決済コストを下げ、加盟店手数料を引き下げることでキャッシュレス導入店舗を増やしていくしかありません。

また、消費者が現金を取扱うことのコストを自身で理解した方がいいと思います。ATMを探す時間、並ぶ時間、あなたの時給が奪われています。店舗の売り上げを銀行に入金する時間もそうです。手数料を払っているわけではありませんが、コストが発生しているのです。クレカの場合だけ手数料を上乗せするのは規約違反ですが、現金時の取扱い手数料を取るようにすれば少なからず、キャッシュレス決済に流れるのではないでしょうか。

あとは銀行が現金の取り扱いを辞めることですね。実際、三井住友銀行はほとんど支店をコンサルティングオフィスとして、事務はオンラインに流す方向に舵を切りました。金融庁や日銀が抵抗すると思いますが、銀行が現金を取扱い続ける限り、現金取引はなくなりません。

そうするとやはり、真剣にCBDC(中銀発行のデジタル通貨)の発行を考える時期に来ているのではないでしょうか。世界では中国のデジタル人民元が2022年の北京オリンピックをターゲットに施行が予定されています。日銀はこれまでCBDCの発行は一貫して否定していますが、金融コストの高止まりを解消するためには中銀発行のデジタル通貨が期待されます。

最後に

私自身、日本に帰国後、ほとんど現金は使用していません。現金しか使えないお店には極力行かないようにしています。加盟店手数料そのものは必要経費かもしれませんが、4%弱は中小小売業者には高すぎるコストです。加盟店手数料を下げても決済が運営できるまでコスト削減できる枠組みが待たれます。

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金融機関に勤務し、上海駐在経験有り。これまで出張や旅行で5大陸22ヶ国訪問。
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